サステナビリティ トップメッセージ
不確実性が高い環境下に、強みを「見極め」持続的成長へ
2025年度は、中期経営計画2027の初年度として確かな手応えを得ることができた一年でした。地政学リスクやインフレなど不確実性が一段と高まる一方で、国内では建設需要が底堅く推移し、社会インフラの更新や産業基盤の整備など、建設業が果たすべき役割はむしろ広がっています。国土強靭化やインフラ更新、再生可能エネルギーなど、建設業への社会的要請は引き続き高い状況にあります。環境、エネルギー、食糧、災害、地方創生など、建設業だからこそ解決に貢献できる課題は数多くあります。当社グループの事業機会は、建物やインフラをつくることにとどまらず、多様な関係者をつなぎ、新しい価値を実体化していく領域へと広がっています。
こうした環境の中で、建設物価の上昇に対する社会的な理解も徐々に進み、適正な価格転嫁に向けた動きが一定程度進展しました。そのような状況の中、当社グループは2026年3月期において、連結売上高6,457億円、営業利益382億円、親会社株主に帰属する当期純利益369億円、ROE10.1%を達成し、建築事業における採算性の向上に加え、海外グループ会社事業における販売用不動産の売却利益の増加なども寄与し、前年度比で大きく業績を伸ばすことができました。連結売上高8,000億円程度、営業利益435億円以上、ROE10%以上を目標とする中期経営計画2027の初年度としては、概ね順調なスタートを切ることができたと評価しています。建設受注高については、個別で5,665億円となり、前年度を下回りましたが、これは単に受注を増やすのではなく、手持ち工事量や施工キャパシティ、将来の収益性への影響を見ながら判断した結果でもあります。足元の需要が堅調であるからこそ、どの仕事を受注し、どのような価値を提供していくのかを見極めることが重要です。受注高や売上高の拡大だけを目的にするのではなく、当社グループの強みを発揮できる案件に経営資源を投入し、将来の収益力や技術力につながる仕事に取り組むことが、持続的な成長には不可欠だと考えています。
ただし、現在の好調な事業環境が永続するとは考えていません。需要が強い時期に利益を上げるだけでは、持続的に成長する企業とは言えません。いずれ訪れる厳しい局面においても収益力を維持し、業績のボラティリティを最小化する必要があります。そのためには、当社グループ自身がどの領域で、どのような価値を生み出し、社会やお客さまから選ばれ続けるのかを明確にする必要があります。好調な今こそ、将来の変化を見据え、強みを磨き直す。これが経営者としての私の強い問題意識です。その鍵が、「強みの見極め」と「突出価値®」の創出です。
未来ビジョンCX150と中期経営計画2027
未来ビジョンCX150は、「価値のゲートキーパーとして、協創社会を実現する」という、創業150周年に向けた当社グループの目指す姿を示したものです。中期経営計画2027は、その実現に向けたフェーズ2「価値の再構築」を進める重要な期間に位置づけられます。
中期経営計画2027で掲げる「見極め、つなぐ。」とは、まさにそのための考え方です。「見極め」とは、当社グループが強みを発揮できる領域を明確にし、そこに経営資源を集中すること。「つなぐ」とは、営業・設計・作業所といったフロントラインの提供価値を高めるタテ展開と、建設事業と戦略事業を連携させるヨコ展開を進めることです。この2つの展開を通じて、価格競争に巻き込まれない突出価値を磨き、創業150周年を迎える2031年、そしてその先の成長につながる企業体質を築くことが、この3年間の本質的なテーマです。
当社グループは、建築事業を中心に成長し、土木事業も着実に力を蓄えてきました。さらに、国内投資開発、グローバル、環境・エネルギー、グループ会社経営といった領域でも事業を広げています。重要なのは、これらを個別に拡大することではありません。建設事業で培った技術や現場力、戦略事業で得た事業者としての知見、地域や顧客との関係性を相互につなぎ、戸田建設グループならではの価値=突出価値へと変換していくことです。
重点管理事業として成長領域に取り組む
中期経営計画2027では、SECC事業、環境・エネルギー事業、海外事業を重点管理事業として位置づけています。これらは短期的な業績貢献だけで評価するものではなく、将来の成長機会を見極め、戸田建設グループならではの価値を事業として育てていくための領域です。
SECC事業は、地域にある価値を見つけ、育て、拡張する事業です。人口減少や少子高齢化、産業基盤の維持、地域経済の活性化など、地方創生をめぐる課題は地域ごとに異なります。だからこそ、画一的なまちづくりではなく、その地域にある資源や産業を見極め、行政、地域企業、住民、外部パートナーと協創しながら、持続可能な事業として成立させていくことが重要です。
アグリサイエンスバレー常総では、農業の6次産業化を軸に、生産から流通・販売まで一体のまちづくりに取り組み、「開発して終わりではなく、まちを育てるまで関わる」という当社グループならではの姿勢を体現しました。越前たけふ駅周辺では、越前市版スマートシティ形成に向けて官民連携プロジェクトが進んでいます。さらに、2025年には山形県酒田市と包括連携協定を締結し、地域資源の活用や新規事業創出に取り組んでいます。
SECCはまだ発展の途上にあります。しかし、地域にある価値を見つけ、育て、拡張する取り組みを積み重ねることで、地域産業の活性化、雇用や交流人口の創出、遊休資産の再活用といった成果につなげていくことができます。地方創生を社会貢献にとどめるのではなく、地域課題の解決と当社グループの事業成長を両立させる事業モデルとして育てていきます。
環境・エネルギー事業は、Green※の力を具体的な事業として育てる領域です。当社グループは、当期に見直したマテリアリティにおいても「環境課題解決への貢献」を重要課題の一つに位置づけています。これは、脱炭素や再生可能エネルギーへの対応を社会的責任として捉えるだけでなく、当社グループの技術力と事業開発力を活かして、将来の成長機会へとつなげていくという考え方に基づくものです。
2026年1月についにスタートした、長崎県五島市沖での浮体式洋上風力発電ファームの商用運転は、約20年にわたり蓄積してきた技術面・事業面の知見を、次の成長につなげる重要な節目です。今後は、発電事業者としての運用ノウハウ、ハイブリッドスパー型浮体の大型化・量産化に向けた技術開発、SEP船の活用による施工能力を基盤に、発電関連ビジネスや事業への展開を視野に入れていきます。脱炭素社会の実現への取り組みは、建設会社としての技術と事業者としての知見を組み合わせることで、将来の収益機会を創出できる重要な成長領域へとつながっていきます。大型化、コスト低減、サプライチェーン構築などの課題に向き合いながら、五島市で得られた経験を再現性のあるビジネスモデルへと発展させていきます。
海外事業については、日本と異なる市場環境、法制度、為替リスクなどのカントリーリスクがあり、国内とは異なる不確実性を踏まえ、ガバナンスと収益性を両立させながら、事業ポートフォリオの選択肢を慎重に広げていきます。単なる規模拡大ではなく、各地域・各案件の収益性とリスクを見極め、現地法人やパートナーとの連携を強化しながら、将来の成長可能性を探索していきます。
重点管理事業以外でも、不動産開発では建設と投資開発が一体となった従来にないビジネスモデルとして、私募リートを活用した循環型投資モデルを構築し、拡大を進めています。それは開発資産の価値を建設を通じて高めたうえで投資資金を回収し、次の開発・成長投資へと振り向ける仕組みです。重点管理事業で将来の成長機会を育てるとともに、投資を伴う事業では資本効率を意識した運営を徹底し、事業成長と企業価値向上の両立を図っていきます。
これらの戦略事業に共通しているのは、短期的な売上や利益だけでなく、将来の事業機会、技術・人財の蓄積、地域や顧客との関係性といった長期的な価値を広げる役割を持つことです。一つひとつの取り組みを単独の事業として終わらせるのではなく、建築・土木、不動産開発、グループ会社の機能と結びつけることで、それらのシナジーを活かした当社グループならではの提案力を高め、将来の収益機会と企業価値向上につなげていきます。これらの取り組みを通じて、Materialize※、Connective※、Greenという強みを具体的な事業成果へと転換し、中期経営計画2027で掲げる収益成長と資本効率向上の好循環につなげていきます。
※当社グループが、長年の事業活動を通じて培ってきた突出価値を生み出す3つの強みを以下の3つの言葉で表しています。Materialize(構想や課題を具体的な形にする力)、Connective(人、技術、地域、事業をつなぐ力)、Green(環境課題の解決を建設会社としての技術と事業創出力によって前に進める力)
資本市場との対話を通じた企業価値向上
資本市場との対話の重要性は、これまで以上に高まっています。当社の株価は2025年11月の中間決算発表以降上昇し、年明けにはPBR1倍を超える水準となりました。企業として取り組むべきことは、成長期待を高める戦略を着実に実行し、その成果と課題を資本市場にわかりやすく伝え続けることです。
建設事業は投下資本が相対的に少ないためROICが高く見えやすい一方、戦略事業は先行投資を伴うため短期的な数値だけではなく、長期的な視点から価値を捉える必要があります。したがって環境・エネルギーやSECCも、将来の事業機会、技術力の蓄積、脱炭素社会への貢献といった観点を含めて評価する必要があります。こうした非財務の取り組みが将来の収益力やリスク低減、企業価値向上にどうつながるのかを、株主・投資家の皆さまとの対話を通じて丁寧にお伝えしていきます。
今後も、人財のフロントシフト、デジタル・AI、技術開発への投資を拡充しながら、資本効率の向上を通じて事業基盤を一層強化していきます。混迷する世界情勢、不確実な経営環境だからこそ、私たちは確固たる強みを見極め、戸田建設グループ独自の突出価値を創出していく必要があります。「Build the Culture.人がつくる。人でつくる。」を実践し、人の力によって多様な価値を生み出し続けるだけでなく、人々の営みの舞台となる、新たな社会文化の土台を育んでいきます。
「突出価値で、未来を拓く」。それが今の私たちが目指す方向です。





