環境 水資源の保護

近年、気候変動の影響による干ばつや洪水等の災害が世界的に多発していることで、水供給の不安定化や水環境・生態系への影響が懸念されています。
当社グループでは、オフィスおよび作業所の双方で水の効率的な使用に努め、節水による使用量低減を徹底しています。また、建設工事で発生する排水についても、水質浄化など保有技術を活かした多様な方法で、最善の処理を施し、周辺の水資源の保護に努めています。

次世代型オフィスでの水資源の保全

2021年に運用を開始した筑波技術研究所のグリーンオフィス棟は、水資源保全の取り組みとしてさまざまな技術や工夫を取り入れています。

雨水を利用して壁面緑化への灌水を自動制御

グリーンオフィス棟の屋上面より集水した雨水を地下の雨水貯留槽に溜め、循環式自動滅菌装置によって水質を維持しながら、スケジュール制御により外装の壁面緑化ユニット、屋上緑化、室内2階の壁面緑化へ供給しています。
雨水を利用することで、上水の使用量削減によるCO2排出量削減、雨水流出抑制を図っています。

屋上面より集水した雨水は、地下雨水貯留槽
壁面緑化ユニット、屋上緑化、室内壁面緑化へ供給
グリーンオフィス棟
屋上緑化の概観

地中熱をグリーンオフィス棟内の冷暖房に利用

地下50m付近の帯水層から、一年を通して約16℃に保たれている井戸水を汲み上げ、熱交換器で回収した地中熱をグリーンオフィス棟の冷暖房に利用しています。
また、熱回収後の地下水は同じ深さの帯水層に戻すことにより、井戸水の枯渇や地盤沈下を防いでいます。

揚水井戸
地中熱チラー(熱源)
熱交換器

雨水を水源とする水循環ビオトープ

筑波技術研究所には、約500m2の地域性在来植物ビオトープ「つくば再生の里」があり、そこに面積約75m2の池があります。
水面に日射が射した際、モツゴ、ツチフナ、スジエビなどの水生生物が逃げる場所となるように、池の一部を水深50㎝程度と深めに設定しています。池があることでトンボが産卵のための飛来や水浴びなどで鳥がくることがあります。池の水は主に雨水を利用しています。池の中央に設置した排水口を通り、循環ポンプで上流へ送り、木炭を通過して流れるシステムとなっています。

つくば再生の里全景
スジエビ
アオモントンボ
モツゴ
水浴びに来るシジュウカラ

建設作業所での水資源の保全

当社グループの建設作業所では、水の循環利用による取水量・排水量の削減を行っています。

トンネル工事における濁水対策

一般的な土木工事では、大量の水を使用する作業や河川内など水がある場所での作業を行う際に大量の濁水が発生します。また、多くの土木工事で使用する生コンクリートは、工事に伴い発生する水が高PHになる原因になっています。工事で発生する水を環境に負荷を与えないように処理することや工事で発生する濁水、高PH水を低減することが、土木工事では課題となっています。
当社のトンネル工事の作業所では、設計上の排水量よりワンランクアップした処理能力をもつ濁水処理設備を設置する場合もあります。濁水処理設備の処理能力以上の負荷がかかるような大雨等に対して貯水できる大きな水槽を設置し、適切な処理をできる設備を整え、工事を行ってます。

トンネル工事に伴い発生する濁水を減らすため、掘削した際の残土を大型テントに仮置きして、雨などによる影響を低減させます。トンネル内の水を工事で使用した濁水と岩盤から出てくるきれいな湧水にわけ、濁水の発生量を減らしてます。また湧水をダンプトラックのタイヤ洗浄機の洗浄水に使用したり、施工ヤードの清掃に使用して工事全体の使用水量の低減に努めてます。
また、当社の管理が有効に機能しているか確認するため、外部試験機関で処理水の水質試験を実施しています。

濁水処理施設
残土仮置き場(大型テント)

砂ろ過装置による処理水の浮遊物質量の改善 ー西日本道路宇治田原東トンネル工事ー

西日本道路宇治田原東トンネル工事の作業所周辺には、宇治茶畑や水田が広がり、茶畑はアルカリに弱く生育障害が発生する恐れがあることから、作業所から排出される処理水を適正に管理しています。
当作業所の濁水処理設備に加え、浄水場に導入されている砂ろ過装置を追加し、処理水中の微細な凝集物を取り除く工夫をしています。さらに突発湧水や豪雨においても未処理水の流出を抑制するため、緊急用貯水池(4,500㎥)を設置しました。貯水池は定期的に船で点検、噴水による曝気により良好な水環境を保っています。砂ろ過装置を通過した処理水は、放流前に貯水することで上澄み水を放流する構造とし、濁水の処理を行っています。

緊急用貯水池
貯水池保全用の設備
砂ろ過装置
砂ろ過装置の概略

止水減水剤を用いた扇状地の井戸の保全 ー西日本道路宇治田原トンネル工事ー

当工事は、トンネル坑口から約300mの地点にある谷山川の直下を掘削工事しています。谷山川の下流域には扇状地が広がり、そこで暮らす住民は浅井戸を使用しています。井戸は約100本に及び、日常生活水として使用されていることから、その水源となる谷山川流域の保全が必要です。広域3次元浸透流解析で解析を行い、掘削による地下水への影響を事前に解析することで、解析値から区間を特定し、止水性の高い薬剤でトンネル周辺をゾーニングする対策を行い、井戸の保全を行いました。

止水ゾーンイメージ図

処理水の坑内粉じん飛散防止への再利用 ー新名神高速道路宇治田原トンネル東工事ー

当作業所の坑内の換気方法は集中排気式を採用し、切羽元の空気を吸い込んで直接坑口へ送っています。
坑内粉じんが大気に飛散しないように、坑口に除塵機を設置し、除塵機内部で粉じんに処理水を噴射、吸着させることで微粒分を取り除き、リフレッシュエアーを放出しています。除塵機内に溜まった粉じん汚泥は排出バルブから濁水処理設備まで配管し、作業員や周辺住民への健康に影響のないよう、作業を行っています。

トンネル坑内換気台車
坑口部除塵機
排気式換気方式概念図

水資源に保全に寄与する研究開発

当社は、さまざまな研究開発を行い、水資源の枯渇抑止、水質保全に寄与しています。

排気ガスを利用したアルカリ性工事排水の中性化

当社ではアルカリ性工事排水の中性化に、作業所で発生した排気ガスを有効活用する取り組みを行っています。
山岳トンネル工事では、湧出する地下水が吹付コンクリートなどに接触したり、岩石などから溶出した成分が地下水に溶け込むことでアルカリ性の工事排水が発生します。工事排水をそのまま河川に放流すると周辺の自然環境に影響を及ぼすため、中性化してから河川へ放流する必要があり、安全にアルカリ性の工事排水を中性化する方法として炭酸ガスによる中和処理を行っています。
本取り組みでは、作業所で稼働する機械から排出されたCO2を含む排気ガスを回収し、アルカリ性工事排水の中性化に利用することで、排出される排気ガスの有効利用を進めています。排気ガスが炭酸ガスによる中和処理の一部を代替することで、中和処理に使用する炭酸ガス使用量の削減にも貢献します。

排気ガスの発生源であるボイラー設備
排気ガスを中和処理に利用している様子

高吸水性ポリマーを用いた安定液掘削技術(AWARD-Sapli(アワードサプリ)工法)

場所打ち杭等の基礎杭工事では、掘削した孔内への地下水の流入を防止し孔壁の安定化を図るため、水にベントナイトを懸濁させた安定液を用いて施工されます。施工中、安定液は繰返し転用されますが、施工終了後は全量が建設汚泥として産業廃棄物処分となるため、近年の工事の大規模・大深度化に伴う安定液使用量の増加は、建設汚泥の削減および水資源保護の推進への課題となっていました。
当工法は、従来のベントナイト系安定液の代わりにサプリ安定液を用いた地盤掘削技術です。サプリ安定液は、水と吸水膨潤した高吸水性ポリマー※が懸濁した安定液で、優れた孔壁安定性により掘削孔内への地下水の流入を防止することができます。また、施工中、サプリ安定液は懸濁性を保持していますが、施工後の廃棄安定液に分離剤(CaCl2等)を添加すると、高吸水性ポリマーは吸水していた水を放出し、水と土砂に分離することで建設汚泥の減量化が図れます。分離水は、pHや濁度等を所管の排水基準に適合させ下水等に放流することで、水資源の確保が図れます。

一般に紙おむつや土壌保水材等に使用され、自重の500倍前後の水を吸水する高分子材料

【AWARD-Sapli工法の概要】
【サプリ安定液の分離メカニズム】
【適用現場での分離事例】

スタートアップ企業との連携

新興国での水事業展開によるSDGsへの貢献

当社は2019年3月に海水淡水化装置を製造販売する(株)Waqua(沖縄県うるま市)に出資(第三者割当増資引受)しました。本出資は、同社を通じた小型海水淡水化装置による水事業の普及拡大により、水源確保が困難な工事現場や船舶および離島での活用などを目的としています。今後はインフラ整備が成長に追いつかない新興国への展開により、SDGsへの貢献を目指していきます。

水リスクの評価

World Resource Institute(世界資源研究所)の「Aqueduct Water Risk Atlas」※1により、国内外の作業所および支店所在地における水リスク※2の評価に努めています。

  • ※1Aqueduct Water Risk Atlas:水量、水質、規制・レビュテーションの3カテゴリー13指標を5段階で評価する、水リスクの分析ツール
  • ※2水リスク:水資源の枯渇、河川氾濫、水質汚染などの企業活動におよぼしうる水に係るリスクのこと
  • SCIENCE BASED TARGETS DRIVING AMBITIOUS CORPORATE CLIMATE ACTION
  • RE100
  • ECO FIRST
  • BOSS IKUBOSS AWARD 2016