Zoom UP 現場
長崎スタジアムシティ
 Ⅱ・Ⅲ工区

ジャパネットグループが主導する一大プロジェクト

※本記事は2023年12月時点の内容となります。

このプロジェクトは、通販で有名なジャパネットグループの主導の下、サッカースタジアムを中心として、アリーナ・ホテル・商業施設・オフィスなどの施設を民間主導で開発するものです。
敷地は三菱重工業が運営していた長崎造船所幸町工場の跡地で、JR長崎駅から徒歩約10分の場所にあります。同工場の閉鎖に伴い、その跡地活用について三菱重工業が公募した結果、ジャパネットを中心とするグループが優先交渉権を獲得し、開発がスタートしました。

長崎市
長崎スタジアムシティ
「長崎スタジアムシティ」の敷地の俯瞰
稲佐山公園からの市街地
観光名所である稲佐山公園から市街地を見る
完成予想CG
「長崎スタジアムシティ」の完成予想CG

巨大な施設を協働で建設する

このプロジェクトにおいて、当社はアリーナと外部コンコースのⅡ工区、そしてオフィス棟のⅢ工区の設計・施工を担当しています。

「私たち戸田建設JVが建設しているこのⅡ・Ⅲ工区の施設と、隣のⅠ工区のスタジアム等は、エキスパンションジョイントで構造上は分かれるものの、確認申請上は延床面積約16万㎡のひとつの建物として完成します。このため、Ⅰ工区の竹中工務店JVとコミュニケーションを密に取り、お互いに調整しながら工事を進めています」とO作業所長は話します。
(以後、発言者の記載無き「」はO作業所長)

スタジアム側から見る
スタジアム側から見るⅡ工区とⅢ工区のCG
浦上川側から見る
浦上川側から見る。手前がⅠ工区、奥がⅡ工区

「長崎ヴェルカ」の本拠地となるアリーナ

アリーナ内観
アリーナ内観

当社が手掛けている約6,000席のアリーナは、プロバスケットボールクラブ「長崎ヴェルカ」のホームとなる施設です。「長崎ヴェルカ」はジャパネットが2020年に創設したクラブで、1年目がB3で優勝、2年目がB2で準優勝、そして3年目の2023-2024シーズンはB1リーグを舞台に戦う、勢いのあるチームです。

「このアリーナの大きな特徴はクラブハウス併設型というところです」と岡山作業所長。このような施設は米国のNBAではよく見られるものの、国内ではまだ少ないということです。このアリーナが完成すると、クラブの選手たちは日々の練習をサブアリーナで行い、その様子は外から自由に見学することができるようになります。

また、このアリーナはコートと観客席がとても近いことも特徴で、選手たちの熱気を間近に感じながら試合を観戦することができるそうです。

観客席の段床
観客席の段床。PCaと一部は現場打ちでつくり上げている
観客席
観客席がコートから近いことがこのアリーナの特徴である

高い精度で組み上げる鉄骨の大空間

屋根の架構
屋根の架構

「アリーナ建設における最大のポイントは何と言っても大空間をつくるという点でした。これを如何にスムーズに、最小の仮設で建設するかというのが課題でしたが、今回は当社が設計・施工を担当するので、設計期間から社内で連携して、スムーズに施工を進められる構成を考えました」。

このアリーナの大空間を実現するため、屋根は大スパンで架ける必要があります。またアリーナ屋上には、RCスラブを打設してフットサルコートを設置するため、屋根荷重も非常に大きなものになります。このため、屋根は長さ64m、梁せい6.4mという巨大なトラス梁で支える構造となっています。

「64mの梁をそのまま揚重することはできませんので、これを3分割し、順番に地組して揚重しました。揚重した部位は仮支保工材のベントで支え、梁全体を架構した後、このベントをジャッキダウンするという流れで建設しました」。

このトラス梁を含めて、アリーナの大空間は鉄骨の複雑な躯体で構成されますが、これらを組み上げるうえで重要になるのが精度です。基礎工事の際に埋めたアンカーボルトを基準として鉄骨を組んでいきますが、少しでもズレが生じるとそれぞれの鉄骨が合わなくなってしまいます。このため、躯体工事は頻繁に測量しながら慎重に進めたそうです。

屋上の様子
屋上の様子。この後、コンクリートを打設してフットサルコートとなる
巨大なトラス梁
屋根を支える巨大なトラス梁
鉄骨構成
アリーナ外周部も鉄骨で構成される

最後まで難易度の高い工事

アリーナの完成予想CG
アリーナの完成予想CG

2022年7月に着工したアリーナは、現在躯体工事まで終わったところです。O作業所長によると、今後も気の抜けない工事が続く中で、特に大きな山場がふたつあるそうです。ひとつは屋上のRCスラブの打設です。コンクリート打設を何度かに分けると、荷重による躯体の変異により、コンクリートが固まる過程でひび割れなどが危惧されるため、3,500㎡という広さを1日で打設します。

「この打設は正に一大イベントです。事前に協議を行い、隣のⅠ工区の休日に多くのミキサー車を導入して実施する予定です」。

そしてもうひとつの山場がそのⅠ工区との接続になります。
「最終的に1棟の建物とするため、Ⅰ工区のスタジアムの屋根ができた後に、スタジアム側の柱に荷重を預けながら、こちらの建物を繋ぎます。その際、精度やタイミングが重要になりますので、しっかりと段取りを整えて臨みたいと思います」。

県下最大のオフィスビル

オフィス棟の完成予想CG
オフィス棟の完成予想CG

当社が手掛けているもう一方、Ⅲ工区のオフィス棟の工事は、I作業所長が指揮を執っています。

「この建物は12階建て、延床面積28,693.48㎡という規模で、長崎県下で最大のオフィスビルになります。私たちが『縁側』と呼んでいる張り出し空間を備えたこのビルは、アリーナやスタジアムも見える開放的な建物になる予定です」。(I作業所長)

オフィス棟は、アリーナの着工よりも後の2023年1月に着工しましたが、同じ2024年7月に竣工させる予定です。19カ月という非常に短い工期ですが、着工前の準備期間にしっかりと段取りを整え、万全の体制で工事に入っており、現在、工事は予定通り順調に進んでいるそうです。

躯体工事
オフィス棟は躯体工事が最上階まで完了している
「縁側」の原寸モックアップ
現場の一角に設置された「縁側」の原寸モックアップ

ワンチームでつくり上げる高品質な建物

作業所長
O作業所長(左)とI作業所長(右)

長崎の街に新たな賑わいをもたらすこの「長崎スタジアムシティ」は、関係者や市民の大きな期待を集めているプロジェクトです。当社の工区も業界団体や市民を対象とした見学会が非常に多く、この取材の前日もBリーグの島田慎二チェアマンが訪れていたそうです。

「そうした見学会で直接お話を伺ったり、またTVにも頻繁に取り上げてくださったりしているので、注目度の高さは肌で感じています。この仕事は営業担当、積算担当、そして設計担当と一緒に、効率的な工法やコストなどについて、1年間綿密な検討を重ねたうえで着工しています。今現場にいる社員だけでなく、ここまで携わった皆がワンチームでつくり上げているのです。ですから、その全員が一緒に喜びを分かち合えるような高品質な建物をつくり上げたいと思います」とO作業所長は話します。

現場の皆さん
現場の皆さん

工事概要

工事場所 長崎県長崎市幸町
発注者 (株)ジャパネットホールディングス
基本設計者 (株)環境デザイン研究所 (株)安井建築設計事務所
ICTプロジェクトマネジメント EYストラテジー・アンド・コンサルティング(株)
企画運営 (株)リージョナルクリエーション長崎
施工者 戸田・上滝・谷川特定建設工事共同企業体
コンストラクションマネジメント (株)三菱地所設計
概要 建築面積:【Ⅱ⼯区】11,817.93m2 【Ⅲ⼯区】2,735.12m2
延床面積:【Ⅱ⼯区】27,373.85m2 【Ⅲ⼯区】28,693.48m2
構造:S造
階数:【Ⅱ⼯区】地上6階 【Ⅲ⼯区】地上12階
用途 アリーナ(約6,000席)・オフィス等