日本最北端の地で建設を進める大規模風力発電所
北海道稚内市で現在整備中の道北風力発電事業は7つのウインドファーム(大規模風力発電所)に計100基以上の風車を設置する大型プロジェクトである。 そのうちのひとつであり、当社で施工する「川南ウインドファーム」の建設現場を訪問した。
当社が建設を先導するビッグプロジェクト
強い風が年間を通じて安定して吹く北海道稚内市では風力発電の導入が進んでおり、現在までに同市の需要の120%に相当する電力を風力発電によって生み出している。 この稚内市で現在新たに進められているのが、7つのウインドファームに計100基以上の風車を設置する「道北風力発電事業」である。事業主はユーラスエナジーホールディングスが母体となる(同)道北風力であり、同社から7つのウインドファームの建設を手掛ける元請4社に工事が発注されている。「元請4社は、当社が1つ、他3社で6つのウインドファームを手掛ける分担となっています。このうち、当社が手掛ける川南ウインドファームには19基の風車を建設します。このウインドファームだけで1年間に一般家庭約58,000世帯の年間使用量に相当する電力を発電します」と現場を指揮する作業所長は話す。(以下、「」内は作業所長)
今回の事業において各元請が手掛ける現場は、工事平準化のために3つのグループに分かれて、その開始時期と工程をずらして進めることになっている。当社はこの第一グループとして2020年に現場に入り、2022年内に19基の風車の建て方工事が完了した。この後、第二グループの風車据付工事が2023年、第三グループの風車据付工事が2024年にスタートする予定となっている。
「複数のウインドファームをそれぞれ別のゼネコンが手掛けるという今回のプロジェクトは、事業主としても初めての試みです。それぞれのファームの規模も大きいことから、工事を管理する規格値を揃えるなど、各ウインドファームが効率的に連携してスムーズに建設が進むことを、事業主は当初から重視していました。そこでこれまでに風力発電所の実績が豊富な当社が第一グループとして、全体の先駆けとなり工事を進めてきました。そこがやりがいでもあり、難しいところでもありましたが、他グループの作業所長や監理技術者と上手く情報共有を行いながら工事を進めてきました」。
巨大な風車部品の搬入作業
今回、当社は現場での風車据付工事以外にも、その前段として風車の部材を稚内港から現場に搬入する作業も管理している。
「今回使用する風車はシーメンスガメサ社製で、定格出力は4.3MWです。風車そのものは中国で生産して船で稚内港まで運んで陸揚げします。ここまでは事業主の管理です。そして深夜から明け方に掛けて稚内港から現場まで部品を輸送し、これを据え付ける工事までを当社が管理しています」。
風車のタワー部分は高さ約84m。搬入時はこれを4分割して運ぶ。また羽(ブレード)は長さ約60m。これは1本そのまま車載して現場に搬入する。
「この巨大な部品を搬入するのは大仕事です。事前に経路上の様々な場所を、許認可を取って拡幅したり、また電線など夜間に見えづらいところをしっかり把握して、事前の綿密な準備を行い、実際の搬送時は慎重に慎重を重ねながら進めてきました」。
風車の基礎と据付工事
今回設置する風車は非常に大型のため、それを支える基礎コンクリートも非常に大きいものとなる。その施工上のポイントは大きく2点あり、1つが風車を支持する240本のアンカーボルトの施工精度である。
「これらの高さの精度について、風車メーカーからは±10mmという指定がありましたが、私たちはこれを鉄筋を組む時に±0mm、その後のコンクリート打設時に多少動くことがありますので、その終了時に±5mmに収まっていることを確認して進めました」。
そしてもう1つのポイントがマスコンクリートの品質管理である。コンクリートは硬化する際に水とセメントなどの水和反応によって熱を発するが、これほど大きなコンクリートの場合、その内部の熱は90℃近い高温となる。これにより基礎表面が乾燥してクラックが入るのを防ぐために、散水養生等の処置をしっかりと行っている。
また、風車の据付工事においては、風力発電所の適地であるが故に、風が弱い時に施工を行う必要があり、その条件に苦労したと作業所長は話す。
「風車部材の据付は、各部材毎に施工できる風速が風車メーカーより指示されていました。そのため、日の出と共に作業を開始する早朝朝礼も実施しました。上架前には風が弱まっている事を見定めて、風車の組み立てを行いました。」
風力発電の経験値を高めていく
こうした厳しい自然環境とも戦いながら進めてきた工事は、今秋ついに全19基の風車の設置を終えた。「今後、現場は電気工事が主になっていきます。ここは発電所ですのでこれは非常に重要な部分で、1つ1つ手順を守りながらしっかりやっていきたいと考えています」と完成に向けた抱負を話す作業所長は今回の工事についてこう話す。
「今回の風力発電所の仕事は、非常に大規模で、かつ関係各社との連携も求められるプロジェクトです。そういう意味ではいろいろな面で貴重な経験を積むことができる現場だと言えます。現在、洋上を含めて風力発電は大きな注目を集めており、今後も展開するチャンスが増えていく分野だと思います。そう考えると今回のようなプロジェクトを通して、今後はより多くの社員が経験を積んでいくことで、風力発電のノウハウを備えた人材が、当社にもっと増えていくと良いのではないかと考えています」。
これから迎える厳しい冬を乗り越えると、長い工事の完成もすぐ目の前だ。
私たちが作っています
円滑な連携を実現する感謝の言葉
作業所の社員にはできる限りいろいろな工事を経験してもらい、今後に役立てて欲しいと考えています。また、この作業所は多くの会社と連携する必要がありますので、円滑なコミュニケーションのため「相手に感謝を伝える」ということも大切にしています。風車の据え付けが終わりましたが、今後も一つひとつの仕事を確実に行い、無事に完成させたいと思っています。
風車メーカーの担当者が外国の方々ですので、意思の疎通を行ううえで、お互いに納得して作業を進められるよう心掛けています。
欧州から来ている風車設置アドバイザーに対する通訳の仕事をしています。相手の立場に立ち、分かりやすく伝えることを心掛けています。
関係会社との連絡調整を担当しています。相手が外国の方の場合、図を描いて説明するなど、円滑なコミュニケーションを心掛けています。
新入社員で、ここが初めての現場です。毎日現場を巡回する中で、風車が1 本 1 本立っていく様子を見て建設業の面白さを実感しています。
仕事に一生懸命取り組む中で、若い皆さんは肩に力が入り過ぎる部分もありますので、良い形でサポートしたいと思っています。
担当の事務以外の部分でも、皆さんと積極的に明るく接することで、作業所内の雰囲気が朗らかになるように、日々意識しています。
工事概要
工事名称 | 道北風力川南ウインドファーム建設工事 |
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発注者 | (同)道北風力((株)ユーラスエナジーホールディングス・稚内GF他の合同会社) |
施工者 | 当社単独 |
工期 | 2020年3月16日~2023年6月30日 |
概要 |
SWT4.3-120(ハブハイト84.7m)、 アップウインド方式(起動風速3m/s、停止風速30m/s)、 合計19基(4,300kW×19=81,700kW)の他、 土木工事、 風車輸送・組立工事、 電気工事、 建築工事 |
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用途 | 風力発電所 |