施設一体型小中一貫校整備事業
2つの“つながる”をコンセプトにつくる小中一貫校
文部科学省による小中一貫教育が推進されている中、大阪府交野市でも市内初となる小中一貫校の建設工事が進められている。この施設一体型の小中一貫校整備事業は、地域教育インフラの新たな一歩を象徴しており、今回は当社が施工する「(仮称)交野市立交野みらい学園」の建設現場を訪問した。
つながる学校
現在、工事は躯体が完成し、内外装が進められている段階である。建設中の建物の第一印象は「大きい!」ということ。新しい学校は義務教育学校として、1年生から9年生という学年構成になるが、現在1クラス約35人、各学年4クラスで計画されており、生徒総数は1,200人を超える予定である。
新しい校舎のコンセプトは「つながる」。「地域とつながる」「学内のみんながつながる」など、子どもたちの様々なつながりを誘発するような仕掛けが施されている。
「教室と廊下の間はガラスの間仕切りで、フルオープンにすることもできます。また『図書室』のような『部屋』という概念はなく、例えば『メディアモール』というように、オープンな空間の中に什器を配置することで用途に対応できる居場所をつくっている。校舎の外部についても非常に開放的な構成となっており、ところどころに設けられたテラスなどは、子供たちの交流の場となります」。と作業所長は話す。
デザインビルド方式での受注
この現場で当社は、新しい学校の敷地となる旧交野小学校の解体工事、敷地周辺の整備を目的とした土木開発造成工事、そして新校舎の建設という、大きく3つの工事を手掛けている。
「本プロジェクトは設計と施工が一元化されたデザインビルド方式で受注しており、当社の下に建築と造成の設計事務所が入る体制で進めています。このため、解体工事中から交野市や教育委員会、学校の関係者にヒアリングを重ねて、スムーズに実施設計から施工へと進めることができました。昨今、全国的に現場の労務不足が問題となっていますが、大阪支店の現場でも労務不足による工事の遅延が発生していました。この現場ではそうした状況を避けるため、実施設計期間中に可能な限り生産性向上の検討を進めて、それらを実施設計へ反映しました。その点でもデザインビルドで受注したことは非常に大きかったと思います」。(作業所長)
生産性向上の検討により、大きなところでは構造に関わる部分にも変更が加えられた。例えばピットの床について、当初計画では事前調査の結果から「地下水位が高い」と想定されたため、耐圧盤の仕様となっていたが、解体工事中に作業所長が何カ所も試掘を行い、水位確認した結果、実際には構造に影響を与えない程度の水位だったことが判明し、耐圧盤を薄い捨コンピットへと変更している。
また躯体工事については工業化工法を多数導入した結果、歩掛(ぶがかり)が向上し、また労務の平準化を図れたことで、労務不足の影響を受けることなく基本工程表通りに上棟を迎えることができた。
普通教室のモデルルーム
生産性向上の取り組みは、内部仕上げにも実施されている。
「その一例が普通教室の仕様です。当初計画では、新しい校舎の建設を進める中で、その教室の一部をモデルルームにする計画でしたが、その時点でかなり工事が進んでいますので、そこで出た変更をフィードバックすると手戻りが発生する可能性がありました。そこで、現場内に残っていた解体予定の児童館の一室が、たまたま教室と近い寸法であったため、着工後すぐにこの部屋を普通教室のモデルルームに改装しました。その過程で仕上げ工事に関する施工上の問題点を洗い出して解決し、施工図にも反映しています。また市や教育委員会、学校の関係者を対象に、このモデルルームの見学会を50回以上実施して、什器の位置や寸法、細かな仕上げ感などについて、内装工事に入る前に確認することができました」。(作業所長)
見学会では教職員の方々から「低学年の教室のホワイトボードの高さを少し下げたい」など、多数の貴重なご意見をいただき、施工に反映している。
特殊構造の屋根を架ける
新校舎の構造は主に鉄筋コンクリート造だが、1階の多目的ホールや屋内運動場棟といった大空間は、下部が鉄筋コンクリート造、上部が鉄骨造の混合構造である。
「こうした異なる構造が取り合う部分の納まりや、それに伴う仮設計画が工事を管理する上でとても重要でした」(作業所長)
そのひとつが体育館の屋根鉄骨である。ここは「構造体の鉄骨梁をランダムに配置することで『ゆらぎ』を表現したい」という設計者のこだわりが強い部分だったが、その意図通りのデザインを実現するためには、鉄骨梁を支える仮設の支保工を組み、1本ずつ順番に鉄骨梁を設置していくことが必須であった。そこで、この支保工を内部仕上げ用の足場と兼用することで、この難工事に関わる仮設を、最小限に抑えて実現した。
地域や人とつながりながら建設する
当現場の仮囲いには、統合予定の小学校や隣接する保育園に通う子どもたちの絵を展示している。これは子どもたちに新しい校舎に親しんでもらいたいという想いから実施したもので、仮囲いの一部には、現場内を覗くことのできる窓も設けている。
「低い保育園児用の窓も設置したのですが、保護者の方と一緒に覗いている幼い子どもの姿を見ると、本当に嬉しいですね」(作業所長)
また、交野市とも相談し、七夕伝説にちなんだ交野市のマスコット「おりひめちゃん」のPRを兼ねて、「おりひめちゃん」のイラストを仮囲いや現場の掲示物、新規入場者教育の修了シールなどに使用している。
「交野市では七夕祭りが毎年7月末にあり、当現場も地域貢献の一環として毎年参加して、祭りを彩る大笹やランタンを奉納してきました。今年は最後の参加となりますので、子どもたちの記憶に残るようなものにしたいと思っています。また6月には、統合予定の小学6年生120人に現場に来てもらう見学会も開催します」。着工から2年という長い期間携わってきたこの現場は、私自身、とても想い入れのある仕事になっています。地域の未来を担う子どもたちや学校関係者に品質の良い建物をご提供できるよう、残りの半年間、現場の皆が想いをひとつにしてやりきりたいと思います」。(作業所長)
私たちが作っています
「作業所長という仕事の醍醐味」
作業所長は現場の全責任を負うという立場・役職であることから、プレッシャーと苦労が絶えないという事実はあるものの、だからこそ様々な苦労を乗り越えて工事が完成したときには、言葉では言いあらわせないほどの大きな喜びと達成感を味わうことができます。
現場運営においては、作業所長の方針や判断によって作業所の良し悪しが出てきますが、それをプレッシャーと感じるのではなく、自分の裁量の中で運営できることをポジティブに捉えて業務にあたることで、私は作業所長という立場を楽しんでいます。
若い社員構成の中で各個人がやりがいを感じて仕事ができ、今後のステップアップとなるようにサポートをしています。
職人さんとまた次も一緒に仕事をしたいと思ってもらえるように、的確な指示や手戻りが発生しないように段取りよく仕事に向き合っています。
コミュニケーションを大切にし、信頼される仕事ができるよう精進しています。
この現場で働けていることに感謝し、指導してくださっている先輩社員の期待に応えるよう一生懸命頑張っています。
工事概要
工事名称 | (仮称)交野市立交野みらい学園 施設一体型小中一貫校整備事業 |
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発注者 | 大阪府交野市 |
施工者 | 当社単独 |
工期 | 2022年4月~2024年12月 |
概要 |
敷地面積:22,265.17m2 建築面積:6,967.06m2 延床面積:16,217.02m2 最高高さ:18.250m 階数:地上4階(校舎棟)、地上1階(屋内運動場棟) 構造:RC造(一部S造) |
用途 | 小学校・中学校 |