Zoom UP 現場
伊達
ウインドファーム
建設工事

新エネルギー分野に 踏み出す一歩

当社が初めて設計から施工までを手掛けた風力発電施設は、道央地区南西部、かつて優良なサラブレッドを輩出した牧場の跡地、緑の連なる丘陵地にある。新エネルギー分野へ踏み出す大きな一歩というべき工事は建築、土木の垣根を越えた「オール戸田」でゴールを目指した。

オール戸田の総力戦で地元の期待に応える

伊達市街、室蘭市街を眼下に望む伊達ウインドファーム。風力発電事業の国内最大手、(株)ユーラスエナジーホールディングスが北海道で5番目に建設する風力発電施設だ。風車は全5基、発電量は10,000kW。営業運転は2011年11月に開始を迎えた。
風車は当社が工場の施工を手掛けた(株)日本製鋼所室蘭製作所製。この5基が稼働し、国内で稼働する日鋼製風車は100基になった。水力、太陽光にも力を入れるエコタウンを目指す伊達市では、市長が現場を視察し、地元紙も取材に駆けつけるほど注目を集めていた。親しみを込めて、市民から現場のメンバーが声を掛けられたこともあるという。
風力発電施設の工事はさまざまな要素が絡み合うため、社内一丸となったチームワークが必要となる。伊達ウインドファームに取り組みはじめたのは、数年前。風車のレイアウトや土地利用計画を何度も行いながら、温めてきた営業の成果が年月を経て実を結んだ。
「道路整備や基礎工事などの土木だけでなく、設計、建築、電気、機械まで担当し、風車の組み立ても行っています。いわば、ゼロから100までをオール戸田でつくりあげているのです」と作業所長は力強く語る。設計に義務付けられる性能評価の大臣認定取得は札幌支店の設計室と本社の構造設計部が連携。その中で特に重要となる風による外力算定と耐震設計は、現地のデータに基づく解析とシミュレーションを本社の技術研究所で実施した。
風車本体部分の調達以外、すべてを施工するのは当社でも初めて。現場の士気は高く、工事主任は「自然エネルギーが注目されているときに携われるのは誇り」と話す。社内でもこの工事の成功は、貴重な実績となって次の工事へつながるものとして期待されている。

緑の丘陵地に立ち並ぶ5基の風車
現場配置図。5基の風車はほぼ一直線に並ぶ
作業所長

入念な準備を重ね巨大パーツを組み立てる

550tクレーンが低いうなり声を上げ、直径約83.3mのブレード(羽根)を地面から引き上げていく。丘の麓から見る優雅な姿とは違い、間近に見る風車は人間を圧倒する迫力がある。
ブレードは、もう一台のクレーンとの合い吊りでほぼ垂直になると、約80mの高さで待ち構えるナセル部分と結合される。微妙な調整を行うのはやはり人の手。ブレードが定められた位置で静止するよう、地上では協力会社の従業員がブレードにくくりつけた介錯ロープを二方向から引っ張る。5人一組息のあった動きだ。最後は作業員がタワーからブレードへと移り、ボルトを締めて固定。5日間にわたった風車組み立て作業のハイライトである。
風車建設の特徴は、一つひとつの部品が大きいこと。1枚約40mのブレード3枚を組み合わせたり、約28mの組み立て前のタワーのパーツなどを置いたりするため、建設ヤードはある程度の広さに加えて、重量のあるクレーンが沈み込まないよう入念な整地が必要だ。
搬入や道路の整備も、もちろん当社の業務の範囲内。風車の部品は運搬車両で崎守港(室蘭市)から約17km離れた現場へと運ばれる。長い部品は荷台からはみ出す部分が10mを超えるため、公道を走る際には荷姿図をつくり、道路管理者の許可を申請する。交差点で車両が曲がりきれるか、橋梁では重量に耐えられるかなど、輸送ルートは十分な検討を重ねて定められた。

ハブに3枚のブレードを装着する。地上での組み立てでは、そばで作業する人と比べてパーツの大きさが際だつ
ローターをつり上げる。2台のクレーンを使い、位置の微妙な調整を行う。所定の位置にくると、ボルトを締め、固定される
タワーのパーツは、9つほどのパーツに分けられて運ばれる

周辺環境へ配慮しクリーンエネルギーをつくる

特に注力したことが、周辺環境への配慮。「風力というクリーンエネルギーをつくり出す現場が周辺環境に悪影響を与えてはならない」との作業所長の考えのもと、細やかな工夫を行った。例えば、ウインドファーム周辺に広がる牧草地への配慮。工事で土埃が舞い上がると牧草が土を被ってしまうため、水まきをしてから作業を始める。土木工事で出る排水は、土砂を分離してから流した。
「地元からの期待も大きいので、周辺への影響を最小限にすることを心掛けました。地元の方から評価してもらえれば心強いですね」。計画の当初から携わる土木技術課長はそう話す。

自然エネルギーを利用する風力発電だからこそ工事を進める上で「環境に配慮した作業」を重要なポイントとして盛り込んだ
北海道電力に送電するための変電施設。
完工後は定格で10,000kWを発電する
土木技術課長

仲間と自分への気配りを忘れず進める工事

2011年7月末に5基すべての風車の取り付けを完了。北西の風が強くなる秋口からは、経済産業局の安全管理審査に向けた試験を行った。「最初から最後まで仲間を思いやる気持ちを持続させなければ、安全に工事を終わらせることはできませんでした」。作業所長は引き締まった表情で当時を振り返った。
地上約80m。ナセルの上など高所での作業もある風車の組み立て。作業所長が作業所方針の一つに掲げてたのが、第三者はもとより、仲間と自分に対して気配りを持った作業だ。「一つの仕事に熱中していると、自分では危険な状況にあると気づかないことがあります。そんなときには周りの者がどんどん声をかけるのが大切です。また独りよがりにならず、チームの和を大切に、一つのものをつくっていく現場でありたいですね」。連帯感のある現場で力強く完工まで前進させた。
(当工事は2011年12月に終了しました。)

私たちが作っています

工事概要

工事名称 伊達ウインドファーム建設工事
工事場所 北海道伊達市南黄金町206-1他
発注者 株式会社ユーラスエナジー伊達
設計 当社
施工者 当社
工事期間 2010年4月~2011年12月
概要 工事用仮設道路造成:W=5m(路盤幅員4m)L=3,702.7m
風車仮設ヤード造成:A≒2,500m2×5カ所
風車基礎築造:コンクリートV=550m3×5カ所
風車部材運搬工:5基(崎守港~現場 L=17km)
風車組立工:H=77m(ブレード先端H=118.6m)×5基
変電所・連系開閉所設備工事:一式
用途 風力発電