運動性能の良さという
病院建築の思想を貫く。
病院建築の思想を貫く。
設計部門 岡村信之
戸田建設が取り組んできた病院建築の基本は、医療を支えるスタッフの方々にとって使いやすく、働きやすい環境であること。例えば、医療従事者の動線の合理化や関係部門の機能強化。それを我々は病院の「運動性能」と呼んでいます。運動性能を上げることで病院力を高めたい。そのような意識で、ここ「泉大津急性期メディカルセンター」の設計にも取り組んできました。
病院の中では、常にたくさんの人や物が移動しています。医療スタッフの部門間移動をいかに短くできるか。医療資材や機器、ベッドや車椅子といった物を、いかに短い動線で運べるか。プランを組み立てていく際には、現場のスタッフの方々との対話が不可欠で、その対話を繰り返し行うことが戸田建設の病院設計の核心かもしれません。病院の運用は各部門によって異なりますし、同じ部門でも病院によって運用方法が違うケースが多々ありますので、これまでの経験だけに頼らず、個別のニーズを必ず確認して設計に盛り込んでいます。
今回、当社からの提案で実現したもののひとつに、手術のために必要な資材を洗浄滅菌する中央材料部と手術室を上下階に分ける、という配置プランがあります。通例は同じフロアに並んでいるものなのですが、中央材料部を手術室の直上に配置し、供給・回収それぞれ専用のエレベーターを設置しました。滅菌物を横移動で長い距離運ぶより、上げ下げで縦移動させるほうがずっと速い。またそれにより生まれたスペースを活かし、手術室と血管造影部門の関連性をさらに深めることができました。
病院の中では、常にたくさんの人や物が移動しています。医療スタッフの部門間移動をいかに短くできるか。医療資材や機器、ベッドや車椅子といった物を、いかに短い動線で運べるか。プランを組み立てていく際には、現場のスタッフの方々との対話が不可欠で、その対話を繰り返し行うことが戸田建設の病院設計の核心かもしれません。病院の運用は各部門によって異なりますし、同じ部門でも病院によって運用方法が違うケースが多々ありますので、これまでの経験だけに頼らず、個別のニーズを必ず確認して設計に盛り込んでいます。
今回、当社からの提案で実現したもののひとつに、手術のために必要な資材を洗浄滅菌する中央材料部と手術室を上下階に分ける、という配置プランがあります。通例は同じフロアに並んでいるものなのですが、中央材料部を手術室の直上に配置し、供給・回収それぞれ専用のエレベーターを設置しました。滅菌物を横移動で長い距離運ぶより、上げ下げで縦移動させるほうがずっと速い。またそれにより生まれたスペースを活かし、手術室と血管造影部門の関連性をさらに深めることができました。
高機能なハイブリッド手術室
手術部と直結のICU
プランの自由度を上げ
大空間を実現するロングスパン架構。
大空間を実現するロングスパン架構。
建物全体で言いますと、「泉大津急性期メディカルセンター」で試みたことのひとつは、ロングスパン架構です。ロングスパンで大空間を実現し、病院内のプランの自由度を高めています。柱が少なくて済むのでエントランスが広くとれますし、各階のスタッフステーションから病室への見通しが良くなり、将来的な変更にも対応しやすくなっています。1枚の床の面積が大きくなるロングスパンの心配は床の歩行振動ですが、完成後、歩行による微振動の実測と解析を行い、問題なく抑えられていることも確認できています。
柱が無く見通しの良いサービスステーション
急性期病院ですので、災害医療や救急医療を重視した設備配置を設計に取り入れるのは、大前提。医療ガスや非常用発電機など非常時の医療継続性への配慮はもちろん、今回は計画時にコロナ禍がありましたので、病室を陰圧化する換気システムの構築など感染対策にも万全を期しています。
救急部門はワンホール型とし、スタッフの詰所から患者に直近でアプローチできる配置計画になっています。また、画像診断部門も救急部門と直結しています。これもつまりは「運動性能」で、その性能の高さが、質の高い医療の提供や安全で健全な運営を支えていくものと確信しています。
救急部門はワンホール型とし、スタッフの詰所から患者に直近でアプローチできる配置計画になっています。また、画像診断部門も救急部門と直結しています。これもつまりは「運動性能」で、その性能の高さが、質の高い医療の提供や安全で健全な運営を支えていくものと確信しています。
ワンホールの救急部門
対話をして意図を汲み取り
使う側の要望にできる限り応える。
使う側の要望にできる限り応える。
施工部門 檜垣幸男
病院の施工を手がけるのは個人としては6物件目ですが、ここまでのロングスパンは初めてでした。スパンは長いところで15m近くあり、柱に繋ぐ梁もその長さ分必要で、1本だと道路輸送ができず、現場で繋げて取り付けました。初めての手法で、限られた敷地内でのヤードの確保など検討事項はありましたが、設計と協力すればできる、という確信もありました。
そのロングスパン架構と同時に、この建物の要点となったのが免震構造です。免震装置は現場ごとに形状が異なりますし、地震発生時に建物が動くスペースの確保や納まりは、毎回工夫が必要とされるところです。
打ち合わせを重ねていくと、スタッフのみなさんから、さまざまな要望が寄せられます。当然ながら、要望を聞けば聞くほど工期とコストに負荷がかかる。でも、より良い病院にするために、ここはどうしても、という熱意には応えたい。使う人が使いやすい施設になることが一番重要で、そのためにも、病院側に言われたことをそのまま取り込むのではなく、必ず対話をして意図を汲み、一番良い方法は何かを考える。大変ではありましたが、それを繰り返しながら結論を見出し、無事竣工を迎えることができました。
そのロングスパン架構と同時に、この建物の要点となったのが免震構造です。免震装置は現場ごとに形状が異なりますし、地震発生時に建物が動くスペースの確保や納まりは、毎回工夫が必要とされるところです。
打ち合わせを重ねていくと、スタッフのみなさんから、さまざまな要望が寄せられます。当然ながら、要望を聞けば聞くほど工期とコストに負荷がかかる。でも、より良い病院にするために、ここはどうしても、という熱意には応えたい。使う人が使いやすい施設になることが一番重要で、そのためにも、病院側に言われたことをそのまま取り込むのではなく、必ず対話をして意図を汲み、一番良い方法は何かを考える。大変ではありましたが、それを繰り返しながら結論を見出し、無事竣工を迎えることができました。
サイバーナイフ放射線治療室
医療施設の更新を止めないために、
厳しい状況の中でも知恵を絞る。
厳しい状況の中でも知恵を絞る。
着工から完成まで22ヶ月。病院の施工としては工期が短く、ちょうど大阪・関西万博の工事の時期とも重なっていたので、労務がかなりひっ迫していました。前もって協力会社さんと打ち合わせしながら、人手を確保しておいたのも、良かったことのひとつかもしれません。躯体工事が遅れると仕上げに影響が出て、建物の品質が保てなくなる。医療機器が入ってくるタイミングも決まっているので、絶対に遅らせないぞ、という思いでやっていました。
病院は、その地域の方々の命を支える重要な施設です。それにもかかわらず、物価上昇はさらに進んでいますし、人手不足も顕著で、病院の建設計画が、規模縮小や中止に追い込まれる状況も出てきています。建物の更新が止まってしまうと、最新医療の提供ができなくなってしまう。地域に根付いた必要な医療施設の建て替えは、今後も知恵を絞って、実現していかなければなりません。
病院の施工は複雑な部分が多々ありますが、完成した時の達成感と言いますか、引き渡しをする際、本当に多くの方に喜んでいただけるので、つくり甲斐のある建物だなと感じています。病院施工の経験を積み重ねてきて、「泉大津急性期メディカルセンター」の完成後、今は新たな病院建築に取り組んでいるところです。今後も、病院を建ててくれと言われれば、全国どこへでも。みなさんに喜んでいただける医療施設を手がけていきたいと思っています。
病院は、その地域の方々の命を支える重要な施設です。それにもかかわらず、物価上昇はさらに進んでいますし、人手不足も顕著で、病院の建設計画が、規模縮小や中止に追い込まれる状況も出てきています。建物の更新が止まってしまうと、最新医療の提供ができなくなってしまう。地域に根付いた必要な医療施設の建て替えは、今後も知恵を絞って、実現していかなければなりません。
病院の施工は複雑な部分が多々ありますが、完成した時の達成感と言いますか、引き渡しをする際、本当に多くの方に喜んでいただけるので、つくり甲斐のある建物だなと感じています。病院施工の経験を積み重ねてきて、「泉大津急性期メディカルセンター」の完成後、今は新たな病院建築に取り組んでいるところです。今後も、病院を建ててくれと言われれば、全国どこへでも。みなさんに喜んでいただける医療施設を手がけていきたいと思っています。
ロングスパン架構の建設現場
持続可能な医療提供への責任。
職員みんなの想いが叶った病院に。
職員みんなの想いが叶った病院に。
泉大津急性期メディカルセンター 院長
竹内一浩
竹内一浩
戸田建設さんにお願いしたのは、まず第一に「災害に耐えられる建物」であること。高度急性期病院として災害医療や救急医療を担っていく上で、地震の際、建物自体の損傷を大幅に軽減する免震構造は必須の要件でした。非常時の電源や受水・排水といったライフラインの確保など、医療継続性についても、今できる限りの最善策をとっていただいています。
泉大津市は海に面しており、もし南海トラフ地震が起こった場合、甚大な被害が想定されています。南海トラフに限らず、災害はいつどんな形で起こるかわかりません。普段よりたくさんの患者さんが運ばれてくるような事態になれば、患者さん全員を病室で診ることは難しいでしょう。そのような事態への対応を考え、エントランスや外来の待合室でも救急対応が可能な設備配置の工夫もしていただいています。
高度な急性期治療を担える手術室や集中治療室の充実、限られた空間の中での効率的な動線など、病院運営の基本を支える部分にも、かなりこだわって設計をしていただきました。設計・施工を通して職員一人ひとりの想いを受け止めて造っていただいたことは本当に感謝しています。頻繁に会議を行い、全ての会議を合わせると何百回にもなると思います。会議では、職員みんながそれぞれの立場で想っていることを伝えさせていただきました。自分たちの働く環境を良くするために、こういう病院であってほしいという理想を話すところから始まり、細かな部分の要望まで一つひとつ丁寧に拾い上げ、形にしていただいたので、想いが叶った病院ができたな、という実感があります。
泉大津市は海に面しており、もし南海トラフ地震が起こった場合、甚大な被害が想定されています。南海トラフに限らず、災害はいつどんな形で起こるかわかりません。普段よりたくさんの患者さんが運ばれてくるような事態になれば、患者さん全員を病室で診ることは難しいでしょう。そのような事態への対応を考え、エントランスや外来の待合室でも救急対応が可能な設備配置の工夫もしていただいています。
高度な急性期治療を担える手術室や集中治療室の充実、限られた空間の中での効率的な動線など、病院運営の基本を支える部分にも、かなりこだわって設計をしていただきました。設計・施工を通して職員一人ひとりの想いを受け止めて造っていただいたことは本当に感謝しています。頻繁に会議を行い、全ての会議を合わせると何百回にもなると思います。会議では、職員みんながそれぞれの立場で想っていることを伝えさせていただきました。自分たちの働く環境を良くするために、こういう病院であってほしいという理想を話すところから始まり、細かな部分の要望まで一つひとつ丁寧に拾い上げ、形にしていただいたので、想いが叶った病院ができたな、という実感があります。
モデルルーム検証により造り上げた4床室
公立と民間の力を合わせた再編統合で
より最適な医療を提供し、地域を支えたい。
より最適な医療を提供し、地域を支えたい。
国が進める地域医療構想のもと、ここ数年、病院の再編統合が各地で行われています。主には2つの病院をひとつにするか、2つの病院の機能を分けるのですが、今回の再編統合では、公立の泉大津市立病院と、民間の生長会府中病院の2つの病院が、それぞれの強みを活かしながら、3つの病院に再編するという全国でも初めての思い切った決断をしました。それぞれが抱えていた課題を解決しつつ、地域にとって一番良い形は何かを模索した結果が今回の再編統合です。
これからも多くの地域で医療課題を解決するために、地域医療構想が進んでいくことでしょう。そのひとつの形として、我々の再編統合はモデルケースになるのではないかと考えています。
小児・周産期を担う「泉大津市立周産期小児医療センター」、回復期医療を担う「府中病院」、そして高度急性期医療を担う「泉大津急性期メディカルセンター」が新たに誕生したことは、この地域のみなさんの安心に繋がる大きな一歩だと確信しています。今後は3つの病院が核となり、他の医療機関とも連携を図りながら、地域の医療を守り、支えていきたいと思っています。
これからも多くの地域で医療課題を解決するために、地域医療構想が進んでいくことでしょう。そのひとつの形として、我々の再編統合はモデルケースになるのではないかと考えています。
小児・周産期を担う「泉大津市立周産期小児医療センター」、回復期医療を担う「府中病院」、そして高度急性期医療を担う「泉大津急性期メディカルセンター」が新たに誕生したことは、この地域のみなさんの安心に繋がる大きな一歩だと確信しています。今後は3つの病院が核となり、他の医療機関とも連携を図りながら、地域の医療を守り、支えていきたいと思っています。
北西面からの全館の鳥瞰写真






