関係者が多い事業だからこそ
誰にでも活躍の場がある。
誰にでも活躍の場がある。
発電事業部門 工藤謙輔
私は今年、入社4年目になるのですが、洋上風力発電に関わりたくて、戸田建設に入りました。大学は海洋環境や漁業などを学ぶ水産学部で、五島の漁師さんにお願いして漁に同行させていただき、海洋生物の調査をする機会があったんです。その時に崎山沖で日本初の浮体式洋上風力発電施設「はえんかぜ」を見て、事業に関する論文を読んだり背景を学んだりしたのが、この分野に関心を持つようになったきっかけです。
海の上にポツンと大きな風車が立っている姿にロマンを感じたんですよね。と同時に、風車が立つことで漁業に影響が出るなら、そこに水産学部での学びや研究が生かせるのではないか、と。当時から洋上風力に関心を持つ学生は多く、優秀な人たちが集まっていることも魅力のひとつでした。洋上風力発電は、幅広いジャンルの人たちと関わりを持たないと進まない事業です。言い方を変えれば、関係者が多く、誰にでも活躍の場がある。さまざまな分野の知識や経験を持ち寄り、可能性を見出していく面白さがあります。
現在の所属は発電事業を担当する部署で、五島市の方や漁師さんなど地元の方々とお会いする機会も数多くあります。五島に行くたびに感じるのが、地域全体で「五島洋上ウィンドファーム」を応援してくれているんだな、ということ。五島の事業と併せて次の候補地での計画も模索し始めているのですが、地域との合意形成がまず最初の課題になります。地元の方々と良好な関係を築いてきた五島での歩みを受け継ぎ、新たな候補地の方々とも真摯に向き合って事業を広げていきたいと思っています。
海の上にポツンと大きな風車が立っている姿にロマンを感じたんですよね。と同時に、風車が立つことで漁業に影響が出るなら、そこに水産学部での学びや研究が生かせるのではないか、と。当時から洋上風力に関心を持つ学生は多く、優秀な人たちが集まっていることも魅力のひとつでした。洋上風力発電は、幅広いジャンルの人たちと関わりを持たないと進まない事業です。言い方を変えれば、関係者が多く、誰にでも活躍の場がある。さまざまな分野の知識や経験を持ち寄り、可能性を見出していく面白さがあります。
現在の所属は発電事業を担当する部署で、五島市の方や漁師さんなど地元の方々とお会いする機会も数多くあります。五島に行くたびに感じるのが、地域全体で「五島洋上ウィンドファーム」を応援してくれているんだな、ということ。五島の事業と併せて次の候補地での計画も模索し始めているのですが、地域との合意形成がまず最初の課題になります。地元の方々と良好な関係を築いてきた五島での歩みを受け継ぎ、新たな候補地の方々とも真摯に向き合って事業を広げていきたいと思っています。
崎山沖に5kmにわたって8基の風車が並ぶ「五島洋上ウィンドファーム」
海と共にある暮らしに根差しながら、
未来を切り拓く「いい前例」をつくりたい。
未来を切り拓く「いい前例」をつくりたい。
今後は単なる発電事業をするだけではなく、例えば浮体にどんな生き物が定着し、周りにどんな影響があるかなど、洋上風車が建つことによって漁業へどんな影響が出るかを調査していく予定です。浮体の周りに魚が集まればいい、というイメージを持ちがちですが、漁の仕方によってもその捉え方は異なります。洋上風力発電を正しく理解し、資源管理や環境保全を広い視野で見て、漁師さんたちときちんと話ができる。そういう事業者でありたいと思っています。
漁業組合とも連携をとって資源管理など島の未来をともに考えていく
「五島洋上ウィンドファーム」での私たちの挑戦が、今後の「いい前例」になっていくとしたら、それはすごいことだと思うんです。「いい前例」は、洋上風力発電の導入を検討している他の地域にとっての、大きな安心材料になる。もちろん、「五島モデル」がどの地域でも通用するわけではないし、長い道のりの中でいろいろと苦労をしてきての今だと思うので、偉そうには言えないのですが、それでも、自分たちが先陣を切り、いい事例をつくることで、未来は切り拓かれる。それは今、自分が仕事をする上での大きなモチベーションになっています。
五島から発信していきたいことはたくさんあります。洋上風力のなかでも、浮体式は環境負荷が小さい。そういったこともまだあまり知られていません。戸田建設が取り組んできた浮体式は、沖合の深い海域への設置も可能です。個人的な夢としては、将来、洋上風力発電の電力だけで国内需要を賄うこと。スパー型の浮体式にはそれくらいのポテンシャルがあると信じています。
五島から発信していきたいことはたくさんあります。洋上風力のなかでも、浮体式は環境負荷が小さい。そういったこともまだあまり知られていません。戸田建設が取り組んできた浮体式は、沖合の深い海域への設置も可能です。個人的な夢としては、将来、洋上風力発電の電力だけで国内需要を賄うこと。スパー型の浮体式にはそれくらいのポテンシャルがあると信じています。
浮体式と着床式の違い。「五島洋上ウィンドファーム」はスパー型浮体式を採用している
つくるのも、建てるのも五島で。
それが実現可能だと証明できた。
それが実現可能だと証明できた。
設計部門 田中康二
8基の風車が海に浮かび、浮体式洋上ウィンドファームが運転を開始する、ついにその時が来ました。これまでのことを振り返り感慨深く思うのは、「浮体式洋上風力」という言葉を多くの方々が一度は聞いたことがある、という状況になってきたことです。2050年温室効果ガスのネット・ゼロに向けたグローバルなエネルギー転換は、世界が解決すべき共通の課題です。五島沖の浮体式洋上ウィンドファームの完成によって、これまで戸田建設が設置した浮体式洋上風力発電の設備容量は、18.8MWになります。世界で稼働する浮体式洋上風力発電の設備容量が約245MWですので、全世界の浮体式洋上風力発電の約8%。その割合は決して小さくなく、挑戦した成果として着実に前進できていることは、ものすごく大きいと感じています。

「五島洋上ウィンドファーム」は2026年1月、いよいよ稼働開始
今回の事業の特徴として、浮体式洋上風力発電を設置する海域が五島沖というだけではなく、風車を支持する浮体構造物を建造するのも五島でできたことがあげられます。地元の方々からご協力をいただき、五島に浮体建造ヤードをつくることができました。そうしたことで、五島市内や長崎県内の地元企業を主体としてコンクリートの巨大なリングの製造や鋼のブロック接合などを実施していただきました。「五島洋上ウィンドファーム」により、当社が取り組むスパー型浮体式洋上風力発電施設は、地域雇用の創出や地域活性化に貢献できることを証明できたのではないかと思っています。
浮体構造物の製造には地元企業の協力も欠かせなかった
「五島洋上ウィンドファーム」では今後の維持管理も、地元企業の方々に担っていただく予定です。メンテナンスに必要な専門知識の取得や人材の育成も進んでいます。建造する、設置する、そして維持管理まで、地域の方とともに一貫してできることが、今回の事業の一番の強みと言っていいでしょう。維持管理はこれから取り組んでいくことになりますが、今後、浮体式洋上風力発電の設置を検討する地域のさまざまな社会課題を解決する糸口になると思います。
撤去まで考慮しての設計と実証。
ものづくりへの責任と使命感。
ものづくりへの責任と使命感。
ここから先は、きちんと電力が供給され続けるか、1年経ったら次のまた1年、5年、10年、そして当初想定している運転期間である約20年先まで、安全に継続運転していくことを気に掛ける必要があります。
「五島洋上ウィンドファーム」は、構造設計の段階から撤去方法を考えて計画しています。実際に実機モデルを使って撤去実証を行い、撤去手法を確立できています。実証まで行うというのは初めての経験でしたが、今後も浮体式洋上風力発電を展開していくにあたり、そこまでやってこそ責任が持てると考えています。
どんな仕事も責任感を持って取り組まなければならないものだと思いますが、商用運転では国内初となる浮体式洋上ウィンドファームを、なんとかしてやり遂げなければならないという使命感が、今回の仕事に取り組むチームの中にはっきりとあったように思います。今後も多くの方々に協力をいただきながら、エネルギーの安定供給と脱炭素に貢献できるよう使命感を持って取り組んでいきたいと思います。
「五島洋上ウィンドファーム」は、構造設計の段階から撤去方法を考えて計画しています。実際に実機モデルを使って撤去実証を行い、撤去手法を確立できています。実証まで行うというのは初めての経験でしたが、今後も浮体式洋上風力発電を展開していくにあたり、そこまでやってこそ責任が持てると考えています。
どんな仕事も責任感を持って取り組まなければならないものだと思いますが、商用運転では国内初となる浮体式洋上ウィンドファームを、なんとかしてやり遂げなければならないという使命感が、今回の仕事に取り組むチームの中にはっきりとあったように思います。今後も多くの方々に協力をいただきながら、エネルギーの安定供給と脱炭素に貢献できるよう使命感を持って取り組んでいきたいと思います。
スパー型浮体式の模型
発電事業から多分野の事業が展開。
地域協働の好例に。
地域協働の好例に。
東邦大学理学部 准教授 竹内彩乃
国土の周りを海に囲まれ、排他的経済水域が世界第6位という日本において、「浮体式洋上風力発電」のポテンシャルは高いと考えています。世界を見渡してみても、ヨーロッパを中心に洋上風力発電の促進が検討され始めており、それに先駆け、長崎県・五島で浮体式のウィンドファームがスタートしたのは、「画期的な出来事」ではないでしょうか。再エネ海域利用法が制定されてから初めて動く、国内での第1号案件。五島での経験とデータを蓄積し、今後、他の地域にも展開していく足がかりとなることを期待しています。
「五島洋上ウィンドファーム」実現の根本には、プロジェクトの立ち上げ当初から戸田建設が地元に入り、数多くの関係者との対話を繰り返してきたことがあると思います。地域協働の鍵は、まず地域の方々自身の「こうしたい」という思いを大切にすること。事業者は、その思いに寄り添いながら、一緒に歩んでいくことが求められます。五島の場合はかなり早い段階から話し合いを始めたため、地域の声を吸い上げる期間が長かったと思うんですね。その声が浮体の設計や施工に生かされ、地域の活性化や持続可能なまちづくりへと展開していった。特に私が注目したいのは、自治体と一緒に活動した成果が、発電事業以外の分野、例えば藻場造成にも広がっていることです。
全国的に「磯焼け」と呼ばれる藻場の消失現象が続いています。「海の森」とも呼ばれる藻場は、海洋生態系を支える重要な役割を担っており、五島市では洋上風力の振興策の検討をきっかけに、磯焼け対策の「五島モデル」を開発。10年という長期にわたる「磯焼け対策アクションプラン」を策定し、藻場の回復事業に取り組んでいます。漁師による「磯焼けバスターズ」も結成されるなど、活動が横軸で広がっている。その展開がすごくいい。五島の場合、協議会を分野別でつくったのもよかった。他の地域では大きな協議会ひとつで全部を話し合うこともありますが、五島では、漁業、環境、産業といったテーマごとに協議会がある。施設をつくるだけでなく、そういった開かれた形での「多岐にわたる場づくり」を行ったことが、成功の要因ではないでしょうか。
「五島洋上ウィンドファーム」実現の根本には、プロジェクトの立ち上げ当初から戸田建設が地元に入り、数多くの関係者との対話を繰り返してきたことがあると思います。地域協働の鍵は、まず地域の方々自身の「こうしたい」という思いを大切にすること。事業者は、その思いに寄り添いながら、一緒に歩んでいくことが求められます。五島の場合はかなり早い段階から話し合いを始めたため、地域の声を吸い上げる期間が長かったと思うんですね。その声が浮体の設計や施工に生かされ、地域の活性化や持続可能なまちづくりへと展開していった。特に私が注目したいのは、自治体と一緒に活動した成果が、発電事業以外の分野、例えば藻場造成にも広がっていることです。
全国的に「磯焼け」と呼ばれる藻場の消失現象が続いています。「海の森」とも呼ばれる藻場は、海洋生態系を支える重要な役割を担っており、五島市では洋上風力の振興策の検討をきっかけに、磯焼け対策の「五島モデル」を開発。10年という長期にわたる「磯焼け対策アクションプラン」を策定し、藻場の回復事業に取り組んでいます。漁師による「磯焼けバスターズ」も結成されるなど、活動が横軸で広がっている。その展開がすごくいい。五島の場合、協議会を分野別でつくったのもよかった。他の地域では大きな協議会ひとつで全部を話し合うこともありますが、五島では、漁業、環境、産業といったテーマごとに協議会がある。施設をつくるだけでなく、そういった開かれた形での「多岐にわたる場づくり」を行ったことが、成功の要因ではないでしょうか。
ウィンドファームでつくられた電力は今後島の生活を支えていくことになる
第1号案件のスタートは、
日本の浮体式洋上風力の希望の光。
日本の浮体式洋上風力の希望の光。
浮体式の洋上風力発電自体、まだまだ技術革新の可能性がある、と聞いていますので、技術者にとって、とても面白い分野だと思いますし、今後、設置する海域を選んでいくにあたっても、今はデジタルを駆使したさまざまなツールがありますので、新しい展開の可能性が見つかるのではないかと思います。洋上風力発電の可能性がある場所は、地域にとっても可能性がある。場所が変われば話をする相手も変わりますし、気候風土も課題もそれぞれに違うからこそ、その地域にしかない良さが引き出される。
より広い視野での今後を考えると、風車のブレードをはじめ、現状は日本でつくれるものが少なく、資材高騰など、乗り越えなければならないことは多々あるのかと思います。産業政策としても国がどこまでコミットしてくれるのかが不透明で、現行の仕組みでは、候補地選定後の事業者の負担が大きい。サポート体制を整え、国と事業者の連携を強めていかなければならない。なかなか大変だとは思います。でも、だからこそ第1号案件の「五島洋上ウィンドファーム」のスタートには意味がある。
五島には、最初の実証実験で建てた「はえんかぜ」があった、というのがすごく大きかったと思っているんです。1基あると見慣れるし、それがあることでのメリットや増やしていく場合の具体的な話が、少しずつできるようになる。視察も絶えず、地元が注目されることでのアドバンテージは相当高かった。今後は、「五島洋上ウィンドファーム」が、日本全体の浮体式洋上風力発電の発展を牽引する「希望の光」になってくれるのではと思っています。
より広い視野での今後を考えると、風車のブレードをはじめ、現状は日本でつくれるものが少なく、資材高騰など、乗り越えなければならないことは多々あるのかと思います。産業政策としても国がどこまでコミットしてくれるのかが不透明で、現行の仕組みでは、候補地選定後の事業者の負担が大きい。サポート体制を整え、国と事業者の連携を強めていかなければならない。なかなか大変だとは思います。でも、だからこそ第1号案件の「五島洋上ウィンドファーム」のスタートには意味がある。
五島には、最初の実証実験で建てた「はえんかぜ」があった、というのがすごく大きかったと思っているんです。1基あると見慣れるし、それがあることでのメリットや増やしていく場合の具体的な話が、少しずつできるようになる。視察も絶えず、地元が注目されることでのアドバンテージは相当高かった。今後は、「五島洋上ウィンドファーム」が、日本全体の浮体式洋上風力発電の発展を牽引する「希望の光」になってくれるのではと思っています。

福江港から望むウィンドファームと日の出






