「もしも」の時を
地域一体で支えたい。
地域一体で支えたい。
京橋プロジェクト推進部 越部 豪&竹下佳奈
「TODA BUILDING」が、「芸術・文化拠点の形成」と「街区再編、防災力強化、環境負荷低減」をテーマに、大規模開発として都市計画決定をしたのは2016年のこと。防災力強化については、まず最初に既存の大型ビルがどのように防災拠点を担っているのかを調べ、民間の大型ビルが活躍しないと、都市の防災は成り立たないのだな、とその必要性を強く感じた記憶があります。
街の役に立ちたい、という思いは、開発の計画以前から、戸田建設の中に脈々とあったと思います。建設業の成り立ちを紐解けば、もともと有事の際の防災の担い手だったわけですから。京橋に120年以上拠点を構える総合建設会社が、次の100年を見据えたビルを建てるなら、どこよりも強いビルにしなければならない。建物だけでなく、人を支え、街の安全に貢献したいという社員一人ひとりの姿勢を感じていました。
その思いの上に、「TODA BUILDING」はコアウォール免震構造を採用し、国内トップレベルの耐震性を実現しています。耐震だけではなく、停電時のバックアップの熱源、生活用水の確保、空調が停止した際の自然換気など、事業継続計画(BCP)を支える様々な性能を備えています。また、それらの安全性能をベースに免震層で守られている中央通り側の広場は、災害時、帰宅困難者の一時滞留スペースとして開放することになっています。
街の役に立ちたい、という思いは、開発の計画以前から、戸田建設の中に脈々とあったと思います。建設業の成り立ちを紐解けば、もともと有事の際の防災の担い手だったわけですから。京橋に120年以上拠点を構える総合建設会社が、次の100年を見据えたビルを建てるなら、どこよりも強いビルにしなければならない。建物だけでなく、人を支え、街の安全に貢献したいという社員一人ひとりの姿勢を感じていました。
その思いの上に、「TODA BUILDING」はコアウォール免震構造を採用し、国内トップレベルの耐震性を実現しています。耐震だけではなく、停電時のバックアップの熱源、生活用水の確保、空調が停止した際の自然換気など、事業継続計画(BCP)を支える様々な性能を備えています。また、それらの安全性能をベースに免震層で守られている中央通り側の広場は、災害時、帰宅困難者の一時滞留スペースとして開放することになっています。
中央通り側の広場は免震構造になっていて、災害時、帰宅困難者の一時滞留スペースとして開放される
地震の揺れに応じて減衰性能を切り替えることができるセミアクティブオイルダンパー
日常的なつながりが
防災力をより強くする。
防災力をより強くする。
防災というのはハードだけではなく、ソフトも重要です。広場を開放する際の案内方法や備蓄品を使う手順など、運用計画を作り込み、それらがきちんと機能するための訓練も必要になります。このソフト開発も今回の私たちの挑戦のひとつ。中央区をはじめ、所管行政庁と連携しながら、できることをひとつひとつ、進めているところです。ここで働く人、訪れる人、街の人をどう支えていくか。一人ひとりが自分の分野でできることを丁寧に考えていくことだと思います。
災害はいつ来るかわかりません。いつ来るかわからない「もしも」の時に備えることは、アート事業とも無関係ではありません。
アートイベントや地域の祭りを広場で開催することは、ここで働く人以外にもたくさんの人々が広場に集まる「非日常」を体験する機会になります。事業者としては、一時滞留スペースの運用トレーニングになりますし、ここに来ていただく方々の「安心」にもつながるのではないかと思うんです。災害時に初めて訪れる場所に滞在するというのは、心理的なハードルが高いものです。イベントに限らず、ビル内の芸術・文化施設に訪れたことがあったり、エントランスのパブリックアートを見に来たことがあったり、多くの方々の日常に「TODA BUILDING」が組み込まれることで、有事の際にも頼りにしていただけるでしょうし、ここに一時身を寄せる際の心持ちも違ってくるのではないでしょうか。
隣接する「ミュージアムタワー京橋」と共に取り組んでいる「京橋彩区エリアマネジメント」も、地域との顔の見える関係作りという意味で、防災の一助になります。有事の際には、エリア全体での面的な、事業者を超えた連携が必要になりますから。ハードとソフト、そして地域との日常的なつながりで、街の防災力に貢献していきたいと思っています。
災害はいつ来るかわかりません。いつ来るかわからない「もしも」の時に備えることは、アート事業とも無関係ではありません。
アートイベントや地域の祭りを広場で開催することは、ここで働く人以外にもたくさんの人々が広場に集まる「非日常」を体験する機会になります。事業者としては、一時滞留スペースの運用トレーニングになりますし、ここに来ていただく方々の「安心」にもつながるのではないかと思うんです。災害時に初めて訪れる場所に滞在するというのは、心理的なハードルが高いものです。イベントに限らず、ビル内の芸術・文化施設に訪れたことがあったり、エントランスのパブリックアートを見に来たことがあったり、多くの方々の日常に「TODA BUILDING」が組み込まれることで、有事の際にも頼りにしていただけるでしょうし、ここに一時身を寄せる際の心持ちも違ってくるのではないでしょうか。
隣接する「ミュージアムタワー京橋」と共に取り組んでいる「京橋彩区エリアマネジメント」も、地域との顔の見える関係作りという意味で、防災の一助になります。有事の際には、エリア全体での面的な、事業者を超えた連携が必要になりますから。ハードとソフト、そして地域との日常的なつながりで、街の防災力に貢献していきたいと思っています。
エントランスロビー、2階の回廊にはパブリックアートが定期的に入れ替わって展示される(パブリックアートプログラム「APK PUBLIC Vol.1」展示風景)
国内トップレベルの
耐震性能を実現。
耐震性能を実現。
設計部門 中川康弘& 川又哲也
「TODA BUILDING」は高さ約165m、地下3階・地上28階建ての超高層複合用途ビルです。通常、150m以上の超高層ビルは、免震構造では高い耐震性能を得られず、制振構造で建てられるのが一般的です。「TODA BUILDING」ではコアウォール免震構造を採用し、「免震特級」と呼ばれる国内トップレベルの耐震性能を実現しています。地震発生時の変形は、一般的な制振構造の4分の1 。地震後の後揺れも大幅に低減しています。
コアウォールは、建物の中央付近、地上1階から最上階までを貫いて配置される、いわば「建物の芯棒」です。平面形状は、H形を2つ組み合わせたような形をしており、壁の厚さは1m以上。素材は高強度鉄筋コンクリートです。このコアウォールとアウトリガー梁・制振梁を連結することで、高い耐震性能を確保しています。また、1階の床下には今回新しく開発したオイルダンパーなどからなる免震層があり、敷地全体を免震化することで、広場を含めた建物内外の安全性能を高めています。
技術的には、非常に難しい試みでした。原点には、総合建設業である私たちが新しい本社ビルを建てるのだから、これまで培ってきた技術の成果を注ぎ込み挑戦したい、という思いがありました。地域全体の防災力強化に向かって、本社ビルの技術はどうあるべきか。全社でアイデアを募集したところ、通常のオフィスビルに用いられる技術だけではなく、住宅分野であったり、研究所でのこれまでの成果であったり、様々な視点からの提案が寄せられました。
そこからコアウォール免震構造へのチャレンジが始まったわけですが、設計も現場も、何から何まで初めての挑戦であったことは間違いありません。たぶん、誰も手がけたことがないと思います。ここまで建てるのが難しいビルは。でもやり切った。全部やり切って、開業を迎えることができた。その経験と成果は、これからの私たちの大きな強みになると思います。
コアウォールは、建物の中央付近、地上1階から最上階までを貫いて配置される、いわば「建物の芯棒」です。平面形状は、H形を2つ組み合わせたような形をしており、壁の厚さは1m以上。素材は高強度鉄筋コンクリートです。このコアウォールとアウトリガー梁・制振梁を連結することで、高い耐震性能を確保しています。また、1階の床下には今回新しく開発したオイルダンパーなどからなる免震層があり、敷地全体を免震化することで、広場を含めた建物内外の安全性能を高めています。
技術的には、非常に難しい試みでした。原点には、総合建設業である私たちが新しい本社ビルを建てるのだから、これまで培ってきた技術の成果を注ぎ込み挑戦したい、という思いがありました。地域全体の防災力強化に向かって、本社ビルの技術はどうあるべきか。全社でアイデアを募集したところ、通常のオフィスビルに用いられる技術だけではなく、住宅分野であったり、研究所でのこれまでの成果であったり、様々な視点からの提案が寄せられました。
そこからコアウォール免震構造へのチャレンジが始まったわけですが、設計も現場も、何から何まで初めての挑戦であったことは間違いありません。たぶん、誰も手がけたことがないと思います。ここまで建てるのが難しいビルは。でもやり切った。全部やり切って、開業を迎えることができた。その経験と成果は、これからの私たちの大きな強みになると思います。
開放感のあるシームレスなエントランスを実現
コアウォールがもたらす
自由で開放的な空間。
自由で開放的な空間。
防災力強化の技術的な要となっているコアウォールですが、今回採り入れてみて、魅力的な空間作りという点でも様々な利点があると感じています。上層部のフロアでは設備配置などにどうしても制限が生まれてしまうのですが、このコアウォールが地震力を受け持ってくれることで、事務所フロアは柱を細くすることができ、開放的な空間の使い方が可能となりました。
建物の芯棒となるコアウォール免震構造
さらに1階から3階の吹き抜けが連続する大空間は、ぜひ体験していただきたい「TODA BUILDING」の見どころのひとつです。この吹き抜けをはじめ、複合施設に求められる回遊性や魅力的な空間を自由に考えることができたのは、「建物の芯棒」たるコアウォールあってのこと。外観も、京橋という風格ある街に溶け込む、軽やかなものになっていると思います。
ちなみに、戸田建設のオフィスとして使用する8階から12階では、コアウォールがそのまま見える場所があります。一般の方が訪れる低層階にも、「建物の真ん中にとてつもなく厚い壁があるのだ」ということを実際に見て、触れて、感じていただける箇所を設けています。コアウォールは、戸田建設の技術者が努力を惜しまず、挑戦し続けてきた証であり、技術力の結晶。これからの100年を支えていくことになると確信しています。
ちなみに、戸田建設のオフィスとして使用する8階から12階では、コアウォールがそのまま見える場所があります。一般の方が訪れる低層階にも、「建物の真ん中にとてつもなく厚い壁があるのだ」ということを実際に見て、触れて、感じていただける箇所を設けています。コアウォールは、戸田建設の技術者が努力を惜しまず、挑戦し続けてきた証であり、技術力の結晶。これからの100年を支えていくことになると確信しています。
吹き抜け大空間の2階の踊り場。こちらも災害時、帰宅困難者の一時滞在施設として開放される
TODA CREATIVE LAB "TODAtte?" から見上げるコアウォール免震構造の壁
東京の中心で
街も人も守る。
街も人も守る。
中央区 都市整備部 まちづくり事業担当課長 福島真一郎
「TODA BUILDING」を含む京橋一丁目東地区は、細い道が多く、歩行者環境をはじめ、防災上の問題をいくつも抱えているエリアでした。そのような中、戸田建設さんから本社ビル建て替えの相談があったのは2012年のこと。区としては、その諸問題を改善する好機でもあり、隣接街区と一体でのまちづくりを調整させていただきました。今回、区画整理事業と面的な機能更新を一緒に行っていただいたことにより、細い道が解消され、通り抜け可能な広い道路に生まれ変わったこと。まず、その点がとてもありがたい。
建物の堅牢性については、戸田建設さんですから、それはもうしっかりされるものと当初から思っています。区内では築年数の経った建物が、順次、耐震性や防火性能の高い強固なマンションやオフィスビルに建て替わっています。そのため、地震発生の際、働いている方や住民の皆様は自身の建物の中に避難していただけるのですが、区の防災として今、一番懸念しているのは、帰宅困難者の対応です。
中央区はその名が示す通り、東京の中央に位置し、銀座、日本橋、築地など乗降客の多い駅が数多くあります。通勤通学で訪れる方もいますが、本区は商業の街、観光の街。見どころが多く、国内外から日々、たくさんの来街者がいらっしゃいます。もし災害があった際、その方々にどこで過ごしていただくのか。なるべく混乱が起きないよう、また二次災害が起きないよう、区として、まちの防災対策の充実・強化に取り組んでいます。
今回、戸田建設さんには、「TODA BUILDING」の中央通りに面する広場の1,400㎡を災害時の帰宅困難者の一時滞留スペースに、建物内の1,250㎡を一時滞在施設としていただき、水や食料をはじめとする防災備蓄倉庫も整備していただきました。隣地の「ミュージアムタワー京橋」とあわせて、約1,050人が滞在できる空間が生まれており、この開発により区の帰宅困難者対策が大きく前進したと思っています。
建物の堅牢性については、戸田建設さんですから、それはもうしっかりされるものと当初から思っています。区内では築年数の経った建物が、順次、耐震性や防火性能の高い強固なマンションやオフィスビルに建て替わっています。そのため、地震発生の際、働いている方や住民の皆様は自身の建物の中に避難していただけるのですが、区の防災として今、一番懸念しているのは、帰宅困難者の対応です。
中央区はその名が示す通り、東京の中央に位置し、銀座、日本橋、築地など乗降客の多い駅が数多くあります。通勤通学で訪れる方もいますが、本区は商業の街、観光の街。見どころが多く、国内外から日々、たくさんの来街者がいらっしゃいます。もし災害があった際、その方々にどこで過ごしていただくのか。なるべく混乱が起きないよう、また二次災害が起きないよう、区として、まちの防災対策の充実・強化に取り組んでいます。
今回、戸田建設さんには、「TODA BUILDING」の中央通りに面する広場の1,400㎡を災害時の帰宅困難者の一時滞留スペースに、建物内の1,250㎡を一時滞在施設としていただき、水や食料をはじめとする防災備蓄倉庫も整備していただきました。隣地の「ミュージアムタワー京橋」とあわせて、約1,050人が滞在できる空間が生まれており、この開発により区の帰宅困難者対策が大きく前進したと思っています。
誰もがアクセス可能な6階屋外テラス
災害時のための水や食料などの防災備蓄倉庫
同じ街にいる者同士の
パートナーシップ。
パートナーシップ。
防災に向けたハードの整備の先には、ソフトをどう整えていくか、という課題があります。中央区では「帰宅困難者支援施設運営協議会」の活動を支援しており、学識経験者や民間事業者、地域団体、行政機関との意見交換を重ねています。戸田建設さんもこの協議会に参加いただいており、一時滞在施設などの運用の部分ですとか、地域連携による防災訓練の企画や実施を一緒に行っています。
街に対して何か貢献できないか、と戸田建設さんからご提案いただくこともあります。これは私が感じたことですが、その提案というのは、組織の体面みたいなことを超えた、もっと純粋な気持からくるものではないかと。新しく生まれ変わった建物を、みんなのために使いたい。そう思ってくださる方々が同じ街にいることは、区としてとても心強い。
実は、防災に限らず、「TODA BUILDING」には区からの様々な要望も受け入れていただきました。たとえば、戸田建設さんの会議室の一部を、 地域住民の集会室として使えるようにできないか、というちょっと無理なお願いをさせていただきまして......。お願いをしたのは、建物を建てている最中。 端から無理と突き返されてもおかしくないような内容と状況にも関わらず、実現するための方策を戸田建設さんがご提案くださり、結果的に、 京橋の近隣町会の人が使える場所を、本社内に設けてくれました。その時も、自分たちの街、京橋の企業として一肌脱いでくれた、という印象で、 そういう気持から生まれるパートナーシップや交流を、これからも大切にしていきたいと思っています。
街に対して何か貢献できないか、と戸田建設さんからご提案いただくこともあります。これは私が感じたことですが、その提案というのは、組織の体面みたいなことを超えた、もっと純粋な気持からくるものではないかと。新しく生まれ変わった建物を、みんなのために使いたい。そう思ってくださる方々が同じ街にいることは、区としてとても心強い。
実は、防災に限らず、「TODA BUILDING」には区からの様々な要望も受け入れていただきました。たとえば、戸田建設さんの会議室の一部を、 地域住民の集会室として使えるようにできないか、というちょっと無理なお願いをさせていただきまして......。お願いをしたのは、建物を建てている最中。 端から無理と突き返されてもおかしくないような内容と状況にも関わらず、実現するための方策を戸田建設さんがご提案くださり、結果的に、 京橋の近隣町会の人が使える場所を、本社内に設けてくれました。その時も、自分たちの街、京橋の企業として一肌脱いでくれた、という印象で、 そういう気持から生まれるパートナーシップや交流を、これからも大切にしていきたいと思っています。
ビル屋上階から望む京橋・日本橋の街並み